自由貿易を進めることによる利点として「比較優位」という考え方があります。
現在でも国際貿易に影響を与えている考え方とされていますが、
この比較優位という考え方はどういうものなのか。
またこの考え方に問題はないのかといった点を、ここでは考えていきたいと思います。
目次(複数ページに分かれた記事もあります)
国際貿易の考え方に影響を与える「比較優位」という原理
(出典「photoAC」)
国際貿易での「比較優位」という考え方は、
二つの国で、二つの商品を生産するとした場合、
一方の国はどちらの生産力も劣るにしても、その中で比較すれば優位な方があり、
その比較的優位な方に力を入れて生産して貿易を促進ことで、
全体としての生産性が高まるというものです。
他の誰かや他の国と比較した時に、
何か1つの側面において明らかに優位である、という意味での、
「個として」の、「1つの側面で」の絶対的な優位ではなく、
全体や集団での活動を考える上で、集団や個人を「複数の面で比較」した場合に
それぞれを比較した場合に優れている部分に特化することで、
「全体」や「集団として」の生産性を最大限に引き出せる、
という考え方で、分業などにも使われる考え方です。
それぞれの特徴を活かしつつも、
他の人の良さを消すことのないように、それぞれがまとまって特化した場合には、
大きなパワーが生み出されるということなのだと解釈しています。
比較優位の例
下に表を記載していますが、
例えば、ここにA国とB国という二つの国があるとします。
どちらも人口は1000人で、
A国では500人でパンを2000個作れる生産力があり(一人当たり4個)
500人で携帯を1000個作れる生産力があるとして、(一人当たり2個)
B国では、500人でパンを1800個作れる生産力があり、(一人当たり3.6個)
500人で携帯を600個作れる生産力があるとします。(一人当たり1.2個)↓
一人当たりの生産力で見ると、
パンは、A国が4個、B国は3.6個なので、
B国はA国に比べると、3.6÷4=0.9の生産力が
携帯は、A国が2個、B国は1.2個なので、
B国はA国に比べると、1.2÷2=0.6の生産力がそれぞれあることになります。
B国はどちらの生産力も、A国には劣りますが、
携帯よりはパンの方がA国の生産力に近く、
どちらかと言えば優位です。
そこでB国は、パンの生産だけに力を入れて1000人全員でパンを作ることにして、
A国では、パンの生産を少なくして100人で生産することにして、
残りの900人で携帯を生産してみることにします。↓
そうするとA国で生産できるパンは100×4=400個
携帯は900×2=1800個
B国ではパンのみを生産して、できるパンは、
1000×3.6=3600個になり、
合計ではパンが400+3600=4000個
携帯はA国のみで1800個が生産できることになります。
元々、パンはA国2000個+B国1800個=3800個
携帯はA国1000個+B国600=1600個なので、
比較的得意な分野にそれぞれが特化した方が、どちらも生産量が上回ることになります。
(再度二つの表を並べておきます。↓)
これが自由な貿易を進めることで、
生産力が劣る国でも、比較的優位な商品を生産することに特化することで、
全体の生産量が増える、という比較優位の原理です。