ジョン・メイナード・ケインズは、世界恐慌の時代を駆け抜けた経済学者でしたが、
景気が悪くなった時には、国が金利を下げるという金融政策を行うことや、
公共工事によって景気対策を行うことを提唱しました。
彼の経済学は「ケインズ革命」と言われましたが、
公共工事を行ってきたために、国の借金が増えているという現実もあります。
ここでは公共工事に関するケインズの考え方を、ひも解いていきます。
目次(複数ページに分かれた記事もあります)
ケインズ経済学 公共工事について~非自発的失業者という考え方
(出典「イラストAC」)
ケインズの公共工事の考えに迫るために、まず「非自発的失業者」という考えから見ていきます。
これまでの経済学の考えでは、失業者が増えれば、労働者は安い給料で働くと考え、
企業は安い給料で雇えるようになれば、利益が出るようになり、
そのことで景気が上向けば、給料も上昇するといったように、
市場の原理に任せておけば、労働者の雇用の関係も需要と供給の関係のように決まり、
失業者がいない完全雇用が達成されると考えられてきました。
しかしこの時代に至るまで社会主義の運動が活発になっていたこともあり、
労働者は労働組合を作って、給料が安くなることを拒むようになっていたので、
そうした安い給料で働くことを拒む労働組合や労働者が、長引く不況の原因だと考えられていました。
しかしケインズはそうではなく、
確かに安い給料で働くことを拒む「自発的失業者」もいると考えましたが、
働きたくても働けない労働者、彼の言う「非自発的失業者」もいると考えました。
そうした働きたくても働く場所がない人のために、雇用を生み出すことが必要だとケインズは主張しました。
ケインズ経済学 公共工事について~有効需要という考え方
(出典「photoAC」)
またこれまでの経済学を振り返ると、
需要と供給の関係を説明する「セイの法則」というものがありました。
この法則は「供給はそれみずからの需要をつくりだす」とも要約されるもので、
一国で供給された全ては、それが需要を生み出し、全てが消費されるというものです。
需要(求められている商品や量)と供給(売り出される商品や量)の関係でいえば、
供給が増えすぎれば値段が下がり、安くなれば買う人が増える面は確かにあります。
ただ現代の人なら、作ったものが余ることもあることは当然ですので、
この説には、おかしいと感じるかもしれません。
産業革命が始まった頃の時代には、今ほどは生産力が高くはなく、
また現代ほど同じ商品同士の競争は激しくなかったと考えられますし、
植民地を獲得して、売るための市場を広げることのできていた時代に生み出された考えを、
当時の人たちが抱くことは仕方ないことのように思います。
(個人的には歴史を見る場合には、現代の価値観だけで見つめるのではなく、その当時の時代背景を考慮すべきだとは思います。)
またそうした考えが世界恐慌の時代にも残っていて、国も対策を取るべきではないという主張もありましたが、
そうした考えにケインズは踏み込んでいきます。
ケインズは「有効需要」という需要こそが、生産量やそれを作るための労働量を決めると考え、
失業者のいない完全雇用を成し遂げるためには「有効需要」を増やすべきだと主張しました。
「有効需要」というのは、単なる需要ではなく、実際にお金を支払う需要のことを意味しています。
欲しいと思うモノがあってもガマンすることがありますが、それは「需要」ではありますが、
お金を払わないので「有効需要」ではないということになります。
「有効需要」に至る(お金を払う)までには、
人はそれぞれの心の中に、ハードルがあるというイメージを私は持っています。
コメント
自国通貨建ての政府債務を完済するということ自体がナンセンスです
コメントありがとうございます。
私も日本の国債のほとんどが日本国内で買われていることは存じ上げております。
ただあくまで私自身の考えなのですが、
政府であれば国内の民間企業から借りたお金を返さなくて良い、
ということではないと考えております。
実際に夕張市は財政破たんしておりますし、
税収よりも借金の返済額が大きくなっていけば、
本当に必要なところにお金を回せなくなる可能性はあると思います。
そう考えれば国債のほとんどが国内で買われていたとしても、
借金が増え続けていくことは良いことではないとは思います。
もちろん公共工事で地方が潤う面はあると思いますし、
お金が流れるという意味では有効性はあると思いますが、
公共工事では技術の発展はあまり見込めないとは思いますし、
その点で経済は活性化しないと考えております。
ここでいう経済の活性化というのは、
技術の進歩などによる生産性の向上のことで、
生産性の向上が経済成長の要因の一つであることはご存知のことかと思います。
様々なご意見があると思いますが、
今後ともよろしくお願い致します。