経済学の中にモノの値段の決まり方として、労働価値説という考えがありますが、
その労働価値説というのは何なのでしょう?
この他にモノの値段の決まり方を説明する、効用価値説との違いは?
ここでは労働価値説をわかりやすく解説すると共に、
効用価値説との違いを見ていきたいと思います。
目次(複数ページに分かれた記事もあります)
労働価値説を分かりやすく解説
(出典「photoAC」)
商品が作られて、それが売られて消費者が使うまでには、以下のような流れがあります。
「労働→商品→交換→使用」
労働価値説というのは、商品を生み出すために必要な手間や労力に着目し、
商品の価値を生み出す源は、この流れの中の「労働」にあるとする考え方になります。
例えば物々交換を考えた場合には、
取ってきた魚3匹と、大根5本を交換した時には、以下のように考えられます。
労働→魚3匹→交換
労働→大根5本→交換
これらはお互いにとって交換する価値があったから、交換したことになりますが、
魚3匹と大根5本の背後には、お互いの労働がありますし、
交換が成立したということは、それぞれの労働の価値は等しいと考えられます。
使用価値と商品価値
また商品には「使用価値」と「交換価値」があります。
先ほども書きましたが、「労働→商品→交換→使用」という流れの中では、
「使用価値」は消費者が自分で「使用」する場合の価値を表したもので、
例えば食べ物のように、生活に不可欠なものもあれば、
使うことで楽しめたり便利になるものもあれば、持っていることで得られる満足感もあります。
「使用価値」というのは、自分が使う場合の「必要度」「満足度」とも言えます。
また自分にとって満足度の高いものでも、他の人にとってはそうではない場合もあり、
使用価値は人それぞれによって変わる主観的なもの、とも言えます。
また「交換価値」は、先ほどの流れの中では、他の人と「交換」する場面で出てくる価値のことで、
交換価値は「値段」とも言えます。
ただ魚を交換しようとしても、相手が魚を欲しいと思っていなければ、交換は成立しないことになります。
この場合、魚は相手にとって使用価値がないことになりますので、
商品を生み出すには、手間や苦労が必要なことは確かですが、
それが必ずしも交換できるとは限らないこともあります。
そこで使用価値に焦点を当てた考え方が生まれることになります。
労働価値説と効用価値説の違いとは
(出典「photoAC」)
「効用価値説」というのは、商品の使用価値、
先ほどの「労働→商品→交換→使用」のうち「使用」に焦点を当てたもので、
商品の価値は、買う人の効用(必要度や満足度)によって決まるとする考え方で、
労働価値説が「労働」に焦点を当てた部分との違いがあります。
例えばオークションで高値がつく商品は、欲しいと思わない方にとっては価値がなくても、
その商品が好きな方にとっては、高いお金を出しても買いたいと思う価値のあるものですので、
その商品が高値で取引されることになります。
また「限界効用理論」というものが考えだされ、
ある商品を1つ消費したり使ったりした場合に得られる、
「必要度や満足度の増加」を「限界効用」と言います。
また「限界効用逓減(ていげん)の法則」というものがあり、これは同じものを消費し続けると、
それを消費することによって得られる満足度が徐々に減ってしまうことを意味しています。
例えば暑い時に、冷たいジュースを飲めば、
1本目のジュースは、のどの渇きや体の暑さも解消されますが、
2本目のジュースでは、もう充分となることもあり、満足度は減ることになります。
ですので同じものを消費し続ければ、それを消費して得られる満足感、
つまり使用価値は減ることになります。
このため労働によってモノの値段が決まるという労働価値説に、疑問が呈(てい)されることになります。
労働価値説は誤り?
(出典「photoAC」)
では労働価値説は、誤りなのでしょうか?
モノの値段が需要(欲しいと思う人の数)と供給(売り出されるモノの数)で決まることは、
ご存知のことだと思いますが、
確かに厳密には、作ってもそれが売れ残ることもありますし、労働の割には報われないこともあるのは確かで、
また良かれと思って、安い値段で料理を提供してくれるお店もあります。
そういう意味では、労働の量とモノの値段はイコールではないのは確かだと思います。
ただモノの値段は、需要と供給の関係以外にも、
ある商品を売る場合には原価で売っては成り立ちませんので、
売り手や作り手の利益を加味して値段は考えられています。
また先ほどご紹介したオークションの例えのように、
買いたいと思う人の満足度で、商品の値段が決まる面もあります。
ですので、商品の値段は需要と供給の関係でも決まる面もありますが、
売り手や作り手の利益を加味して考えられることもありますし、
買いたいと思う人の満足度で、値段が決まることもあるなど、
その商品によって複数の要素がからみ合って、商品の値段が決まると考えられますし、
労働価値説は、全てではないとしても、一面では正しいと考えられます。
また労働なくして、商品が生み出されることはありませんので、
労働が価値あるものを生み出すことも、また確かなことだと思います。
終わりに
経済的な考え方からすれば、価値の尺度を測るためにお金でその価値が考えられますので、
家事や育児、ボランティアはその価値を測れないことになります。
ただそこには確かな価値があるはずで、その他にも信頼できる友人や家族など、
お金では測れない、価値あるものはたくさんあると思います。
ですので時には経済の考えから離れて、人生という視点で物事を考えていただければと思いますし、
労働の本当の価値は「人の役に立つこと」だと思います。
経済的な話からは逸れてしまいますが、
労働は「人の役に立つこと」という意味で、労働に価値を認める考えは、
時代がどれだけ変わったとしても、変わらない人間の価値観ではないでしょうか。