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資本論の中でのマルクスの資本主義に対する分析
彼が1867年に発表した「資本論」では、資本主義社会への分析がなされています。
マルクスはこの資本論の第1巻を書いたところで亡くなり、
彼が残した原稿を元に、友人のエンゲルスが第2~3巻を書きあげています。
マルクスの資本論の中には、これまでの経済学の考えも取り入れられています。
アダム・スミスが主張した「労働価値説」や
商品の「使用価値」や「交換価値」の考えも受け継がれています。
またマルクスは、資本主義は格差が拡大していくという点を指摘しています。
これは現在でも問題になっている点ではありますが、
当時の労働者の現状を目(ま)の当たりにしていた彼の思いは、
現在の私たちが考えている以上に熾烈(しれつ)なものがあったのかもしれません。
お金の強い魅力のために、資本家(経営者や経営のためにお金を出す人)は
当初のお金で、さらにお金を生み出すことに必死になり、
また労働者に働かせて企業が手にする利益は、労働者に支払った賃金以上だと考え、
資本家は労働者を搾取(さくしゅ)している、と厳しい指摘をしています。
必要労働と剰余労働
この中で、マルクスは労働者の労働を
「必要労働」と「剰余(じょうよ=余り)労働」に区別して考えています。
労働が価値(利益)を生み出すという労働価値説に立っているので、
労働者が生み出した利益のうち、労働者の給料として支払われる部分が「必要労働」で、
企業の利益になる部分が「剰余労働」と捉(とら)えています。↓
「剰余労働」が企業の利益になるのですから、
企業は利益を増やそうと思えば、「剰余労働」を増やせば良いわけです。
「必要労働」(=給料)を一定のままに、「剰余労働」を増やすには、
労働時間を長くすれば良く、それで当時の労働者の全体の労働時間が長くなり、
長時間労働が日常化していたのかもしれません。
このように「必要労働」の時間(=給料)を一定のままに、
労働時間を長くすることで、長くなる「剰余労働」の時間を「絶対的剰余価値」と言います。↓
また労働時間が一定であれば、
「必要労働」(=給料)を減らせれば、「剰余時間」が増えることになります。
このように全体の労働時間を一定に「必要労働」の時間(=給料)を減らすことで、
長くなる「剰余労働」の時間を「相対的剰余価値」と言います。↓
「必要労働」の時間(=給料)を短くするためには、
機械化によって効率を高めることで必要労働時間を短くすることもできます。
労働の再生産費
またマルクスは労働者の賃金を図る目安として、「労働の再生産費」という考え方を用いています。
労働者は1日を終えれば、すぐにまた労働ができる訳ではなく、
1日を終えて、食事をして、
寝てまた食事をして、そのためには住宅が必要となり、
休みの日には趣味を楽しんだり、デートをしたりして、
それで働くための活力を生み出すことができます。
このように、労働者を働かせるために必要な費用を「労働の再生産費」と考えていて、
現在のグローバル化に影響を与える比較優位を唱えたリカードも、
労働者の賃金は、生存可能なギリギリの水準で決まるという「生存賃金説」を主張しています。
そうすると「必要労働」(=給料)を下げるためには、
資本主義経済全体で、多くの企業が安いモノづくりに励めば
「必要労働」(=給料)を下げることができ、企業の利益が増えていくことになる、
というのがマルクスの資本主義に対する主張になります。
また資本家は、労働者自身が安い給料で満足してもらえる方が都合が良いので、
機械化を進めて労働人口が過剰にして失業率が高くなれば、
労働者としては安い賃金でも働けることを望むようになるので、給料を安くすることもできます。
そうした理由から、資本主義では格差が拡大すると考えていました。
マルクスは資本主義の行く末は、労働者による革命により資本家の財産が奪われると記しています。